昨日は午後からPBPクレームの最高裁判決に関する説明会に参加しました。

PBP(プロダクト バイ プロセス)クレームとは、物を製法で規定した請求項のことを言います。

この判決のために記載不備が指摘された出願が多々ありましたので、現状避けて通ることができません。実務上、構造がわからないから製法で記載していることが多く、従来では製法の記載が認められていました。それが最高裁の判決後にダメと言われてしまいますのでやっかいです。

備忘録として以下に記載します。

1. 最高裁の判決において、PBPクレームに関し、

①当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか

②物の発明であってもその特許発明の技術的範囲を当該製造方法により製造された物に限定しているのか

が不明であり、特許請求の範囲を明確に理解することができず、権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うことになり、適当ではない、と判断されました。要するに、物のクレームに製法が含まれていると、物としてよくわからん、ということかと思います。

2. この拒絶理由が通知された時の対応方針

①当該クレームの削除

②修辞法だけの問題であれば修辞法の補正

③「単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎないクレームである」との主張またはそのようなクレームへの補正

④製法クレームへの補正

⑤不可能非実際的基準を充足することの主張

3. 上記対応方針中、最後の拒絶理由で④を行う補正は、知財高裁において、「物の発明」として請求していた権利とは異なる効果を有する別の権利を請求することにほかならないため、限定的減縮に該当しないと判断されていました。ただ、今後は請求項の記載が明確ではないという拒絶理由が通知されますので、明瞭でない記載の釈明を補正の目的とすることになり限定的減縮をする必要がありません。よって、最後の拒絶理由通知後の補正で「物の発明」を「方法の発明」に補正しても、限定的減縮は問われないことになります。

4. 上記対応方針中、⑤の主張が審査においてどこまで認められるか不安です。1件だけ認められたことがありますが、他の案件でどうなるかはわかりません。個人的には、③で対応した方が安心できます。明細書をよ~く読むと、そのような表現への補正が可能な場合がいくつかありました。

5. 今後、PBPクレームの無効審判が頻発する可能性がありますが、訂正審判若しくは訂正請求において、「物の発明」を「方法の発明」に訂正することに関しては、特許庁は明言していません。訂正の目的の中には、補正時のように限定減縮しなければならない規定はありませんが、審判便覧第14版では、「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない」例示として、「請求項に係る発明のカテゴリや対象が変更される場合」が記載されていたようです(54-10)。ただ、現在の審判便覧第16版では、54-10が削除されているようです。削除されたら、この訂正が認められるかと思ってしまいますが、Q&Aでは、「法令に基づき、事案に応じて審判合議体としての判断を審決の中で示していきます。」とされています。これは、用途クレームが物クレームよりも広く解釈される判例があるためのようです。