先日、特許異議申し立ての研修に参加しました。以前にも異議申立について投稿しましたが、今回は実務的な留意点を中心に教えていただきました。事務的な内容を事務の人に聞いたところ、常識の範疇の内容でした。ベテランの事務の方はすごいですね!

備忘録として記載します。

1.特許異議申立制度の趣旨

強く安定した権利を早期に設定する。

2.要件

・何人も請求可能(113)(申立人に承継は認められない。)。

・請求項ごとに請求可能(取消理由通知後の取り下げは不可)。

・公益的事由のみ請求可(113一~五)(17の2③、25、29、29の2、32、39①~④、36④一、36⑥(四号を除く)、外国語書面出願の原文新規事項違反)。

・申立期間:特許掲載公報の発行の日から6月以内(113)。

・全件書面審理。

・取消決定を行う前に取消理由通知を行い、特許権者に訂正の機会が与えられる。

・料金:16,500円+申し立てた請求項数×2,400円。

・一事不再理の規定はない(114③)。

・訴えの定義:取消決定の場合だけ可。特許庁長官を被告とする。

3.手続の注意点(ここがポイント!)

・正本、副本のコピーを作成した後、正本のみ特許印紙を貼る(正本に特許印紙を貼った後にコピーするのは誤りではないが推奨していないようです。)。

・副本についても押印が必要(押印をコピーしたものではダメ)。

・正本は1通、副本は特許権者の数+審理用1通。

・ページ番号を付する。

・申立理由は具体的に記載する(従属請求項についても「請求項1と同様。」ではダメ)。

・引用発明の認定、一致点、相違点を記載する。

→引用発明の認定がない申立てが多いそうです。『甲一号証に記載されている発明は、・・・という発明である。』と記載します。これがないと、維持決定される可能性が高いそうです。)。

・包括委任状を提出している場合には、包括委任状番号を記載する。

・郵送または窓口にて提出する(オンラインは不可)。

→宅急便や郵パックで送ると信書便法2条3項に該当せずに到達主義が採用されるため、注意が必要です(19)。申立期間を過ぎた案件がいくつかあったそうです。

・外国語で作成された文書を証拠とするときは、取調べを求める部分について訳文を添付する必要がある(特施規61)。

→機械翻訳をそのまま訳文として提出することが多発しているそうです。理解できた部分しか認定されないようです。

4.その他

・特許権者は、特許異議の申立てがあったことを知ることができます。申立てから2週間程度で異議番号通知が通知される。

・第三者は、フラットパットで知ることができます。1か月程度のタイムラグがある。

・特許権者からの面接の要請があった場合、審理期間中少なくとも一度面接を行う。

→特許異議申立人は同席できないそうです。

・特許異議申立人との面接は行わない。

→申立書の記載についての説明を求める必要があると判断された場合に限り、合議体から面接が要請されることがある。

・無効審判と異議申立が同時に係属した場合、無効審判を優先し、申立事件は中止され、無効審判確定後再開する。

・訂正審判と異議申立が同時に係属した場合は、異議申立を優先する。

・取消理由通知に記載された指定期間(60日、在外者は90日)に意見書又は訂正請求書を提出する(120の5①)。

→意見書の提出期間を延長することは、原則、できないそうです。ただ、期間延長を必要とする合理的かつ具体的な理由などを記載した期間延長請求書を十分な余裕をもって提出し、審判長がそのような理由があると判断したときは、例外的に延長が認められることがあるそうです。

・取消理由通知後の訂正請求費用は、49,500円+5,500×(訂正の請求に係る請求項数)