アモルファス金属

amorphous metal

ガラスのように原子が不規則(ただし、長距離秩序は失われているが短距離秩序は存在)に配列している非結晶質の金属。一般には、溶融した合金を短ロール法により急冷(105~107K/s)凝固させてつくり、厚さ25μm、幅300mm程度の広幅薄帯が、また回転水中紡糸法により0.1~0.2mm径の細線が、扁平粉末法により数十μm径の粉末が作られるようになった。なお、真空蒸着、スパッタリングによって薄膜もつくられる。通常の結晶質の金属とは、著しく異なった性質を示し、高強度、耐食、高透磁率材料として実用化されている。

(アモルファス合金は低損失特性を示すため、デバイスへの応用が行われています。10年以上前に携わらせていただきました材料です。記憶はあやふやですので、以下の内容は誤っているかもしれません。ご了承ください。)
(High-B、High-μ、ΔTx≧60Kを目標に組成探索を行いました。アモルファス合金は、過冷却液体領域でニュートン粘性流動が生じますので、熱処理による応力除去効果が高く、低いコアロスを示します。High-BのためにはFeを多く含有する必要がありますが、Fe含有量が多いために構造緩和しやすく、ΔTxが低下します。結晶が析出すると界面で破断が生じるため、大変脆くなります。High-μについては、この合金粉末を用いたトロイダルコアで評価する場合には、粉末形状を扁平化するか、もしくは成型密度を向上させれば改善します。成型密度を向上させるためには、いくつかノウハウ的な工夫をしていました。インダクタの場合、粉末を扁平化すると成型密度が低下するために直流重畳特性が劣化します。また、加圧力を上げて成型密度を向上させると、直流電流が小さい側では高いインダクタンスの増加率を示しますが、直流電流が大きい側ではインダクタンスの増加率が相対的に低く、結果として、直流重畳特性は劣化します。
インダクタンスと直流重畳特性を同時に向上させることは大変難しかったと記憶しています。また、ベストの材料特性が出る条件でインダクタを作製しても、材料特性がインダクタの性能に直接反映されるわけではありません。インダクタの性能を向上させるためには、必要な特性毎に特有の製造条件が必要です。インダクタの場合、搭載する箇所のインダクタンスは回路によって概ね決まっていますので、所定のインダクタンスを出したい場合にはインダクタの大きさを変更します。このため、小職が開発していた時には、最終的には、いかに直流重畳特性を向上させるか、がポイントでした(きっと今は違うと思います。)。また、アモルファス合金は大変硬く、加圧力を上げないと成形できません。鉄粉って、なんて柔らかいんだろう、と感じたことを記憶しています。)

(アモルファスの短距離秩序(短範囲規則性:SRO)は、大学での卒論、修論でのメインテーマでした。)